「リスキリングを始めたいけど、今の会社を辞める気はない」という人は少なくありません。
本記事では、転職しないリスキリングでも使える補助金の条件、活用方法、おすすめスクール、実際の事例まで詳しく解説します。
「今の会社に不満はないけど、市場価値は上げておきたい」「もしもの時のために備えておきたい」という人は、ぜひ参考にしてください。
リスキリングは転職しなくてもOK【結論】
「リスキリング=転職」というイメージを持っている人は多いですが、これは誤解です。
結論として、リスキリングは転職しなくても始められますし、補助金や給付金も在職中のまま活用できます。
補助金の半分は在職中でも受け取れる
経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」では、受講修了時点で受講費用の50%(上限40万円)が還元されます。この50%分は、転職するかどうかに関わらず受け取れます。
追加で20%(上限16万円)が上乗せされるのは、転職して1年間継続勤務した場合のみです。つまり、「転職しない=補助金がゼロになる」わけではなく、半分は在職中でも確保できるということです。
さらに厚生労働省の「教育訓練給付制度」であれば、転職の有無は一切問われません。在職中の学び直しであれば、まずはこちらの制度から検討してみるのがおすすめです。
リスキリングで学べる内容を詳しく知りたい人は、以下の記事もあわせて読んでみてください。
転職しなかった人は58.5%というデータも
スキルアップ研究所(株式会社ベンド)が2024年3月に実施した調査(n=500)によると、リスキリングをおこなった人のうち、実際に転職した人は34.0%にとどまり、58.5%は転職していません。
転職しなかった理由としては、以下が上位にあがっています。
- リスキリングが必ずしも転職を目的としていなかったため(30.6%)
- リスキリングで得たスキルを現職で活かすことができると感じたため(25.8%)
また、転職しなかった人のうち65.3%が「将来的にはリスキリングを活かして転職したい」と回答しており、「今は転職しないが、将来の選択肢としてスキルを蓄えておく」という使い方が一般的であることがわかります。
出典:スキルアップ研究所「転職におけるリスキリングの有効性に関する実態調査」
次の章では、リスキリングそのものの定義を確認したうえで、転職しないリスキリングで得られるメリットを見ていきましょう。
そもそもリスキリングとは
リスキリング(Reskilling)とは、技術革新や事業構造の変化に対応するために、新しい職務・業務で必要とされるスキルを新たに習得することを指します。
もともとは企業がDX推進のために従業員へおこなう学び直し施策として広まった言葉ですが、現在は個人が主体的に取り組むキャリア戦略としても使われています。
リカレント教育・自己啓発との違い
リスキリングと混同されやすい言葉に「リカレント教育」「自己啓発」があります。それぞれ目的が異なるため、下記の表で違いを整理しておきましょう。
| リスキリング | リカレント教育 | 自己啓発 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 新しい職務で必要なスキルの習得 | 就労と学び直しを繰り返す | 個人の興味・成長 |
| 主な学習者 | 在職中の社会人 | 一度離職・休職した社会人 | 誰でも |
| 仕事との関係 | 直結(実務で活かす前提) | 一時的に仕事を離れて学ぶ | 直結しない場合も多い |
リスキリングは「働きながら」「実務に直結するスキルを」学ぶ点が最大の特徴です。この前提を押さえておくと、この後紹介する補助金制度やスクール選びの基準も理解しやすくなります。
転職しないリスキリングで得られる3つのメリット
転職しないリスキリングには、現職に居ながらキャリアの選択肢を広げられるという独自のメリットがあります。
昇給・昇格につながる
マネジメントスキルやDX関連スキルを習得することで、社内での評価が上がり、昇給・昇格の材料になるケースがあります。
「転職しないと年収は上がらない」というのは思い込みです。現職の評価制度の中でスキルを可視化できれば、転職リスクを取らずに年収アップを狙えます。
ポイントは、学んだスキルを「学んだだけ」で終わらせず、上司や人事に伝わる形でアピールすることです。この点は後述のSTEP4で詳しく解説します。
社内異動(社内転職)の武器になる
営業職からマーケティング職、事務職からデータ分析職など、社内での職種転換(社内転職)を目指す際にも、リスキリングで身につけたスキルは強力な武器になります。
外部の転職と違い、社内異動は今までの人間関係や会社への理解を活かしたまま、新しい職務に挑戦できるのが利点です。
「今の会社は好きだが、今の仕事内容には限界を感じている」という人は、転職よりもまず社内異動の可能性を探ってみましょう。
副業・複業の選択肢が広がる
Webライティングやデザイン、SNS運用などのスキルを身につければ、現職を続けながら副業に挑戦する選択肢も生まれます。
副業で実績を積んでから独立や転職を検討する、あるいは複業として本業と並走させる、といった柔軟なキャリア設計も可能になります。
次の章では、こうしたメリットを得るために在職中でも使える補助金・給付金の条件を具体的に見ていきましょう。
在職中でも使える補助金・給付金の条件
在職中のリスキリングで使える公的な補助金・給付金には、主に「経済産業省」と「厚生労働省」の2つの制度があります。
経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」の条件
POINT
対象は「企業と雇用契約を結んでいる在職中の方」。転職するかどうか迷っている段階でも参加できます。
この制度は、指定講座を受講・修了することで、受講費用の50%(上限40万円)が転職の有無に関わらず還元されます。
追加の20%(上限16万円、合計最大56万円)は、転職して1年間継続勤務した場合のみ支給される仕組みです。
注意したいのは、対象講座がサービスごとに指定されている点です。同じスクールでも「補助金対象プラン」と「対象外プラン」が分かれているケースがあるため、申し込み前に必ず対象講座かどうかを確認してください。
厚生労働省「教育訓練給付制度」の条件(転職不問)
厚生労働省の教育訓練給付制度は、転職の有無を一切問わず、講座修了によって給付が受けられる制度です。在職中に長く働き続けたい人は、まずこちらを検討するのがおすすめです。
| 種類 | 給付率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 一般教育訓練給付金 | 20% | 10万円 |
| 特定一般教育訓練給付金 | 40〜50% | 20〜25万円 |
| 専門実践教育訓練給付金 | 50〜80% | 年間40〜64万円 |
受講したい講座がどの区分に該当するかは、ハローワークまたは講座提供元の公式サイトで確認できます。
転職した場合/しない場合の受給額比較
ここまでの内容を踏まえ、「転職する」「転職しない」で受け取れる補助金額がどう変わるかを整理すると、以下のようになります。
| 経産省事業(受講修了時) | 経産省事業(転職・1年継続時) | 厚労省の教育訓練給付 | |
|---|---|---|---|
| 転職しない場合 | 対象(上限40万円) | 対象外 | 対象(区分により上限10〜64万円) |
| 転職した場合 | 対象(上限40万円) | 対象(上限16万円が上乗せ) | 対象(区分により上限10〜64万円) |
転職しない場合でも、経産省事業の50%還元と厚労省の給付制度は併用できるケースがあるため、条件をよく確認したうえで両方の活用を検討しましょう。
次は、こうした制度をふまえて、実際にどう学びを進めていけばよいのか、具体的なステップを見ていきます。
転職しないリスキリングの活用方法4ステップ
転職しないリスキリングを成果につなげるには、以下の4ステップで進めるのがおすすめです。
STEP1. 現職で活かしたいスキル・目的を棚卸しする
最初に、「なぜ学ぶのか」「学んだスキルを現職でどう使うのか」を明確にしましょう。
目的が曖昧なまま講座を選んでしまうと、学習が続かなかったり、学んだスキルを活かせなかったりする原因になります。
現職の業務内容や評価制度を振り返り、「どんなスキルがあれば評価が上がるか」「どんな業務なら裁量が広がるか」を書き出すところから始めてください。
STEP2. 補助金対象の講座・スクールを選ぶ
目的が定まったら、補助金対象になっている講座・スクールを候補に絞ります。
選び方の詳しい基準は後述しますが、「学びたい分野」×「補助金対象かどうか」の掛け合わせで候補を絞ることで、金銭的な負担を抑えながら学べます。
STEP3. 仕事と両立できる学習計画を立てる
在職中のリスキリングで最も挫折しやすいのが、この「両立」の部分です。
「毎日2時間」のような無理な計画は、繁忙期に崩れて挫折の原因になります。まずは「平日30分+週末にまとめて2時間」など、忙しい時期でも続けられる最低ラインを決めることをおすすめします。
オンライン完結、倍速視聴、スキマ時間学習に対応しているかどうかも、講座選びの段階で確認しておきましょう。
STEP4. 学んだスキルを社内でアウトプットする
最後のステップが、学んだスキルを実際の業務やアピールに落とし込むことです。
学習が「自己満足」で終わらないように、資格取得や業務改善提案など、目に見える成果として社内に示すことが重要です。
1on1や評価面談のタイミングで「何を学び、どう業務に活かしたか」を伝えられるよう、学習の記録を残しておくと良いでしょう。
失敗しないリスキリング活用スクールの選び方
スクール選びを間違えると、費用も時間も無駄になってしまいます。以下の4つの基準で確認しましょう。
経産省・厚労省の補助金対象講座か
同じスクールでも、補助金対象のプランと対象外のプランが分かれている場合があります。申し込み前に、必ず公式サイトまたは無料相談で対象講座かどうかを確認してください。
在職中でも通える受講形式か
オンライン対応の有無、ライブ授業か録画かなど、働きながら続けられる形式かどうかは事前にチェックしておきましょう。
特に残業が多い職種の場合、「好きな時間に受講できるか」は継続率を大きく左右します。
学びたい分野に対応しているか
デザイン・マーケティング・DX・ビジネススキルなど、スクールごとに得意分野が異なります。STEP1で明確にした目的と照らし合わせ、実際に学びたい内容とズレがないか確認しましょう。
転職前提ではなく社内活用もサポートしてくれるか
スクールによっては、カリキュラムが転職活動を前提に組まれており、在職を続ける人向けの相談がしづらいケースもあります。
「転職するかどうかまだ決めていない」ことを正直に伝えたうえで、無料相談での対応を見てから判断するのが確実です。
これらの基準を踏まえ、次の章では実際に転職しなくても活用できるスクールを3つ紹介します。
転職しなくてもOKなリスキリング活用スクール3選
ここでは、転職を前提としなくても利用しやすいスクール・サービスを3つ紹介します。
マジキャリ
こんな人におすすめ
- スキルを学ぶ前に「何を学ぶべきか」から整理したい人
- 今の会社に残るか転職するか、まだ決めきれていない人
- 学んだスキルを社内でどう活かすか、戦略から相談したい人
マジキャリは、スキル習得そのものではなく「何をリスキリングすべきか」「学んだスキルを現職でどう活かすか」を整理するキャリアコーチングサービスです。
転職を前提としないサポートが特徴で、社内でのキャリアアップや、リスキリングの方向性そのものに迷っている人の相談にも対応しています。
「リスキリングしたいけど、何から手をつければいいかわからない」という段階の人ほど、スクール選びの前にマジキャリで方向性を整理することをおすすめします。
※無理な勧誘は一切ありません
SHElikes
こんな人におすすめ
- デザイン・マーケティング・ライティングなどクリエイティブ系スキルを学びたい人
- 経産省のリスキリング補助金を使って費用負担を抑えたい人
- 女性向けのコミュニティで学びたい人
SHElikesは、女性向けにデザイン・マーケティング・ライティングなど幅広いクリエイティブスキルを学べるスクールです。
経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に採択されており、レギュラープラン(250,800円)は受講修了で50%(上限40万円の範囲内)が還元されます。転職先にSHEが紹介した企業へ1年継続勤務した場合は、追加で20%が上乗せされ最大70%還元となります。
申し込み前に確認しておきたいこと
- 補助金の対象者は雇用保険加入者に限られ、フリーランスや無職の方は対象外です
- 追加20%還元は「SHEが紹介した転職先」への転職・1年継続が条件のため、転職しない場合は50%還元が上限になります
補助金の条件や還元率は変更される可能性があるため、申し込み前に必ず公式サイトの最新情報を確認してください。
グロービス学び放題
こんな人におすすめ
- 職種を問わずビジネススキル全般を低コストで学びたい人
- まとまった時間が取れず、スキマ時間で動画学習したい人
- まずは低価格で試してから本格的な学習に進みたい人
グロービス学び放題は、経営戦略・マーケティング・リーダーシップなど、ビジネススキル全般を動画で学び放題のサブスクリプション型サービスです。個人向けは12ヶ月プランで月額1,700円からと、他のスクールと比べて費用負担が小さいのが特徴です。
申し込み前に確認しておきたいこと
- 経産省のリスキリング補助金は、パーソルテンプスタッフ経由の特定プログラムを利用した場合に限られます。個人で直接契約する場合は補助金の対象外となるため、補助金目的で選ぶ場合は事前に対象条件を確認してください
補助金の対象外でも、月額1,700円という価格で幅広いビジネス講座が学び放題なのは大きな魅力です。「まずは低リスクで学習習慣をつけたい」という人に向いています。
出典:https://hodai.globis.co.jp/
他にもリスキリングを活用できるスクールを詳しく知りたい人は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
リスキリングのおすすめは?目的・年代別の選びかたと資格
転職しなかった利用者の体験談・口コミ
実際に転職せず、マジキャリで自己理解を深めたことでキャリアに変化があった人の体験談を紹介します。
評判・口コミ
出典:マジキャリnote
2人に共通しているのは、「転職ありき」で動かず、まず自己理解を深めたことで、社内に残る選択にも納得感を持てている点です。転職はいつでもできる選択肢として残しつつ、まずは在職中に一歩踏み出してみるのがおすすめです。
転職しないけどキャリアを見つめ直したい人はマジキャリ
ここまで、転職しなくてもリスキリングは活用できることを解説してきました。
とはいえ、「今の会社に残るべきか、転職すべきか」自体に迷いがある人も多いのではないでしょうか。
実際、マジキャリが実施した独自調査(面談実施者N=1,168件)でも、30代の21.3%が「転職すべきか迷っている」という悩みを抱えていることがわかっています。
リスキリングの前に、まず「自分は何を大切にして働きたいのか」を整理しておくと、スクール選びやスキル選定の軸がぶれません。
マジキャリでは、転職を前提とせず、現職でのキャリアアップも含めた相談が可能です。「リスキリングしたいけど何を学べばいいかわからない」「今の会社に残るか迷っている」という人は、まず無料相談で今の状況を整理してみてください。
リスキリングに関するよくある質問
Q. 退職後でも補助金は使える?
退職してからでも、リスキリングの補助金は使えますか?
経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、企業と雇用契約を結んでいる在職中の方が対象のため、退職後は基本的に対象外になります。
退職後は、厚生労働省の教育訓練給付制度など別の制度を検討する必要があります。リスキリングを考えているなら、在職中に申し込むほうが選択肢が多いです。
Q. 転職しないと補助金を返還する?
補助金をもらった後に転職しなかった場合、返還を求められることはありますか?
受講修了時に受け取る50%分の還元は、転職しなくても返還の必要はありません。
追加の20%(転職・1年継続が条件)については、そもそも条件を満たさない限り支給されない仕組みのため、「もらった後に返す」という心配は不要です。
Q. リスキリングと転職どちらを先にすべき?
転職とリスキリング、どちらを先に進めるべきですか?
転職するかどうかを決めきれていない段階なら、先にリスキリングから始めるのがおすすめです。
在職中に補助金を使ってスキルを身につけておけば、社内での評価アップにも、将来的な転職にも両方に備えられます。転職を先に決めてしまうと、在職中しか使えない制度の選択肢が狭まってしまいます。
結論からお伝えすると、リスキリングは転職しなくても問題ありません。補助金の一部は在職中のままでも受け取れますし、実際に転職せずキャリアアップした人も数多くいます。